さて、前回は漢方薬が複雑薬理である、ということをお話ししました。

しかも、オーダーメイドで調整していくと同じような症状でも全然違う薬を出すことがありますし、同じ処方でも生薬の量を変えたり、ちょっとだけ足したり引いたりします。
逆に全然違う症状に見える人が同じ処方を出されることもあるんです。

なんなら、一つの薬で水の足りないところには水をやり、水が余分なところからは水を取る場合もあります。
やることが全然逆になっていて、こんなの西洋医学では意味がわかりません。
そもそも薬理が複雑。
そして使い方も複雑。
だから、科学的に見て根拠がないのではなく、西洋の科学が単純すぎて、漢方の効果を『証明できない』だけなんですね。

でも、じゃあどうやって効果を証明するんでしょう?

その答えが、
1000年単位の、圧倒的な臨床例の積み重ね
です。

途中のピタゴラスイッチがどうなってるかは知らない。
だけど、こういう人にこの生薬を使うと、このピタゴラスイッチの旗が上がることだけは、1000年単位の積み重ねで間違いなくわかっている。

この圧倒的な臨床例の数という、西洋医学ではもう最終段階で提示するはずのものこそが漢方薬のエビデンス

であって、複雑怪奇なピタゴラスイッチの中身を、どうにか傾向だけでも見つけて、医者がちゃんとその人に合った薬を出せる様に組み立てられていった理論が、陰陽五行を中心とした理論になる訳です。

ですから、漢方薬の薬理的な効果がつい最近になって、ようやくひとつふたつ、西洋の科学でも証明されたとか、むしろその過程で、細胞の中の新しい構造物が見つかったということすら起きています。

すごいんですよ、漢方。